6月末、梅雨の長雨の合間に訪れたジリジリと太陽の照りつける暑い1日、ライ麦の収穫をしました。
なかなか雨のない日に恵まれず種蒔きのとき同様に幾度かのリスケジュールをし前日夕方に急遽収穫の決行が決まりました。

2月の麦踏みから驚くべきスピードで成長を遂げたライ麦は5月には2メートルを超える高さへと成長。
このライ麦の生命力こそが麦も育たない寒冷な地域で根付いた証なのだと圧倒されました。


(5月9日のライ麦畑)

それから1ヶ月半ほど、少しずつ稲穂の中の実が詰まって重みを増し、青々とした色から収穫の気配を思わせる黄金色へと変わっていきました。

小鮒さんと地元の農家さんのご協力の元、半反ほどはカマを使って手刈りで、残りは刈り取り用の機械、バインダーを使って。
全てのライ麦が刈り終わったあとはコンバインを使って脱穀していきます。
このライ麦特有の長さが作業性を奪い何をするにも一苦労です。



迫り来る雨雲にせっつかれながら皆顔を真っ赤にし、汗まみれになりながら夢中で作業しました。
そして脱穀が終わった後の積み上げられたライ麦の藁は私たちの背丈を優に超える高さとなりました。

農耕的な生活に対して気軽に抱いていた憧れを思い直さざるを得ないほどに収穫の1日は体力を消耗し、
さらに後日知らされる収穫したライ麦の検査結果に心をも消耗することとなりました。
その検査結果とは赤カビ病の発生です。

赤カビ病は開花期から乳熟期間にかけて雨が多く、気温が比較的高い状態で経過すると発生が増加するそうです。
雨でなかなか収穫ができず、その間にも雨が降り続けたためより病気の出やすい環境となってしまったのでしょう。

半年以上の時間をかけ、手間をかけ、手元には何も残らなかったけれど、「ライ麦を作れなかった」という経験が残りました。
もうやらずにはいられない、と半ば前のめりにライ麦作りを始めた私たちにとってはこれも十分な収穫です。
またすぐに季節は巡り種蒔きの時期となります。

防除薬剤を散布することで赤カビを防ぐことはできます。
それでも無農薬にこだわり続けるのか、その意味と大変さへの理解を深めて2年目の挑戦へと続きます。

5月25日。
東北本線、JR黒磯駅前でひっそりと始まったKANEL BREAD。
おかげさまで7年が経ちました。

年々チームも大きくなり、彼らとともに、果敢にチャレンジして成功したり、失敗したり。
それらすべてを糧にしながら、
あっという間に7年、たった7年、されど7年。

無事に続けてこれたのは、たくさんの人の支えがあってのこと。

これからも、皆さまのより良い選択肢の一つになれるよう、
二度とない日々を、大切に精進していきます。

8年目もどうぞよろしくお願いします。

 

〜感謝の気持ちを込めて栃木県産とちおとめイチゴのソースのプレゼント〜
現在onlineshopにて販売中の【おまかせパンセット】をご注文していただいた方に
数量限定strawberrysauceをひとつお入れいたします。
ミルクで割ったりアイスクリームにかけたり。
フレンチトーストや朝のトーストに。
様々なおいしい時間にお召し上がりください。
(※なくなり次第終了とさせていただきます。)

沢山のお客様に届きますように!!

先日ホエイのイングリッシュマフィンの記事で少し触れた「チーズ工房 那須の森」さん。
休日にチーズ作り体験と勉強会へと伺いました。

板室街道をずっと北上し、市街を抜けてしばらく走るとチーズ工房へ到着です。
こちらでは毎朝、地元の乳牛から採れる生乳を仕入れ、チーズ作りから販売までを行なっています。

実際に、成型の体験と生乳からチーズになっていくまでの各工程を見せていただきました。
乳酸菌発酵や菌による熟成を経て作り上げられるチーズ。パンとは同じ発酵食品仲間。
私たちと同じように厳密な温度管理、湿度管理がなされあとは菌の働きに委ねる、自然相手の仕事です。
短いものでも2〜3週間、長いもので半年から1年以上の熟成期間を置くチーズ作りは焦らずゆっくり。
時間と菌を味方につけて、一朝一夕には成し得ない美味しさこそがチーズの魅力なのだと、
熟成庫で静かに眠るたくさんのチーズたちを見て人間が立ち入ることのできない見えない世界を感じました。
それは小さくて、でも果てしない宇宙のようにも思えます。

聞けば日本では希少なブラウンスイスの生乳の仕入れ先である牧場も我々の生活圏内にあるという。
ホエイの原料である生乳を生み出す彼らにも会いに行ってみようと思います。
この土地で長らく生活しながらもまだまだ見るべきもの、触れ合うべきものは尽きなそうです。
那須の豊かな自然の恩恵にまた少し触れた休日でした。

天気の良い休日ときたら居ても立っても居られない。
外にテーブル並べてホエイ生地のバンズとつなぎ無し100%ビーフのパティでハンバーガー。

バンズは普段は店頭には並んでいませんが前もってご予約いただければお作りできます。
街のパン屋、便利に使ってください。

年末から試験的に販売していたホエイのイングリッシュマフィン、
今月より定番商品として毎日お店に並んでいます。

ホエイとは、ヨーグルトの上澄みやチーズをつくる時に牛乳から分離される乳清のことです。
高たんぱく、低脂肪でカルシウムやビタミン類など栄養価が高いだけでなく、
ホエイに含まれるたんぱく質は必須アミノ酸の含有量がとても多く優れた食品です。

那須には土地柄たくさんのチーズ工房があり、当然そこでも副産物として毎日たくさんのホエイが出ます。
チーズを作る際の原料である牛乳の9割がホエイとなるそうです。
一部は家畜の飼料として利用されていますが、その他は産業廃棄物として捨てられてしまいます。

そのホエイを分けていただいてパンにしたのがホエイのイングリッシュマフィンです。
那須の牛乳を使って美味しいチーズができて、その残りのホエイで美味しいパンができるという地域循環。
NASU&BREAD(現在移転準備中)細田さんの呼び掛けに賛同してカネルブレッドでもこの取り組みを始めました。

むぎゅっとした食感、バターも牛乳も使っていないので軽い食べ心地だけど物足りなくない。
噛み締めていると乳っぽいほのかな酸味が感じられます。トーストしてカリッとさせて食べるのがおすすめ。
バターやチーズなど乳製品との相性がいいのはもちろん、野菜たっぷりのサンドイッチも良いです。

身近にある材料で美味しいものを作れたら自然にも優しくてみんなが嬉しい。
減らし合うことではなく、想いを乗せて次へ渡していくようなことにエネルギーを使いたいです。
次とは、お客様だったり、未来だったり、隣で一緒に働く仲間だったり。
毎日お昼頃にお店に並びます。この小さな地域循環の輪に入りませんか。

余談ですが、現在カネルブレッドでは近くにある「チーズ工房那須の森」さんでホエイを分けていただいています。
こちらで作っている「森のチーズ」、去年イタリアで開かれた世界チーズアワード(WCA)で最高位のスーパーゴールドに入賞し、さらにその中の10位に選ばれました。近くに素晴らしい食材や職人さんがいらっしゃること、改めてこの土地でベーカリーを営む意義を考えます。

11月に那須の畑に蒔いたライ麦、
お店の定休日にみんなで2度目の麦踏みをしてきました。

寒害、冷害の原因となる霜柱や風による根の浮き上がりを防ぎライ麦が地中にしっかりと根を張れるように、
また、土をぎゅっと押し付けて湿度のある状態にしてあげること、
草をわざと踏んで傷つけることで徒長を防いだり、茎が太くなることで、風に強い麦に成長するように、
麦踏みにはいくつかの理由があります。

雨風や、実をつけた自分の重さに耐えられる太くてしっかりとしたライ麦になるように。
みんなの足で一歩、一歩と踏みしめてきました。

まだまだ小さくて柔らかいけれど、僕らのライ麦、順調に成長しています。

Welcome 2020!
明けましておめでとうございます
2020年が皆様にとって幸多き一年でありますように。

KANELBREADは新年2日より営業
人日の節句も過ぎ
そこかしこと漂う年末年始の浮き足立った空気も徐々に薄れて
通常運転へとシフトしています。

全社員で行う新年会、今年はご近所のHIKARI SHOKUDOさんで。
笑いと涙と、賞賛と反省の入り混じった2019年を振り返り
また、新たに新年の決意を固めました。
今年の私たちの目標は「作品性」。

2019年、スタッフ一人一人が毎瞬に心を刻みながら積み重ねた、そんな一年だったように思います。
今年はその一重一重により磨きをかけ、洗練されたものにしたい。
高い感度を持ち、本質を捉え、細部にまで意識を行き渡らせ、自分たちらしさを込める。
そこにはとびきりのユーモアとときめきも忘れずに。
高い作品性を持って関わる全ての人々を笑顔にしたい。

つまるところ、「すべては誰かの幸せのために」

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

那須の紅葉情報。

那須街道ただいま紅葉真っ盛り。
木漏れ日と前の車が蹴散らして舞い上がる落ち葉が楽しそう。
お天気の良い日を狙ってぜひお出かけください。
窓全開のドライブが気持ちいいです。

那須湯本を過ぎると景色は一変、冬の入り口です。
那須山もうっすら雪化粧。

朝晩はぐっと気温も落ちて来ましたが昼間の日差しは優しく温かい良い季節です。
今季一番の冷え込みを更新しながら季節は進んでいきます。

先日、みんなでライ麦の種まきをしてきました。

今年の始まりに描いたたくさんのビジョンの中のひとつ。
「那須でライ麦を育てよう」
我々の一大プロジェクトは一歩踏み出しました。

もともとは10月中旬に予定していた播種。
例年に無い台風と長雨で土壌の状態も安定せず、
伸びに伸びてようやく畑に行くことができた時には11月になっていました。
種まきひとつすら自分たちの都合で動くことはできない。
パン屋も酵母という自然相手の仕事だと思っているけれど、
農はもっとダイレクトに自然と繋がっている。
畑には屋根もなければ灯りもない、温度管理なんてもっての外。
ついつい自分たちの仕事と比べてみたりして。

お店から車を走らせて10分ちょっとのところにある畑を借りています。
種は会津でライ麦を有機栽培している農家さんから譲っていただいて、
いつもお世話になっている那珂川町の小鮒農園さん主導のもとみんなで種まき。

一反ほどの畑に小さくてかわいい播種機、シーダーを使って種をまいていきます。
その姿に校庭に白線を引いたことが思い出されて、そんなイメージで押してみたら
ふかふかの畑の上は校庭のようにスムーズには進んでくれない。
なかなかの力仕事に戸惑いながらも美しい一面のライ麦畑を想像して、
曲がらないようにまっすぐ、まっすぐ進む。

そして、畑の3分の1ほどはシーダーを使わず手で種まき。
どんなふうに違ってくるでしょう。

農家さんとの繋がりを大切にしたい、カネルブレッドの一つの想いですが、
より自然であることを求めて行き着いた先が畑だったように思います。
実際に畑に出て汗をかいて、泥まみれになることで色んな想像を飛び越えて実体験となり、
分かったことは知っていたようで、何も知らなかったんだということ。

まだまだ前途多難ですが、自分たちの作ったライ麦でパンを焼く!
そんな究極の地産地消、FARM TO BREADを夢見て船は進みます。

カネル登山部、那須山の紅葉調査に行ってきました。

マウントジーンズからロープウェイに乗って、那須連山を眺めながら稜線を歩くコース。
標高1800m付近は今が見頃。これから少しずつ黒磯の方にも紅葉が降りてくるでしょう。

ここにいると背中に那須の山々を感じる瞬間がよくあります。
よく晴れてひんやりと冷たい朝は山の空気がここまで降りてきているように感じられて
あぁ、今日の山はきっといいだろうと思わずにいられません。
駅前だし、ザックを背負った登山客の方も週末の見慣れた光景。
良い山行を、とお見送りできるのも嬉しいものです。

我々はというと、不安な空模様の中歩き始め、ゴール間近で強風に煽られ撤退。
ハイマツを風除けにポケットサンドでコーヒータイム。
みんなで髪を濡らして、鼻水垂らして、頬張る。あぁ、美味しい。
不思議なもので素材の輪郭が際立って感じられる。

下山していくとみるみるガスがとれて、青空と紅葉が眼前に。
日差しの暖かさに身体が冷えていたことに気付く。
ほっと嬉しくなって「今ここで栗のカンパーニュが食べたい!」なんて声をあげたら
持ってる人がいるものだから驚きです。しかも二人も。

冷たい雨のサンドイッチも、青空の下のカンパーニュも甲乙つけがたい美味しい記憶。